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拉致の現場「舟隠し」、元捜査員とともに訪問|【宇出津事件】第4回 

※この記事は最後まで無料でお読みいただけます。

宇出津(うしつ)事件とは
1977年9月18日に石川県能登半島の宇出津で発生した拉致事件。宇出津はこの地方の旧町名であり、今でも宇出津商店街や宇出津新港などその地名は地元民に親しまれている。この宇出津を代表する石川、福井両県のリアス式海岸(大小多数の入江が続く、海岸線が複雑なことが特徴)は北朝鮮工作員がゴムボートで接岸し、工作員を送り込むのに適した海岸線であった。この事件の被害者・久米裕(当時52歳)は北朝鮮工作員である在日朝鮮人李の偽計により騙され、北朝鮮からやってきた屈強な工作員の男たち複数名にこの海岸より工作船に乗せられ北朝鮮へと渡った。久米は政府認定拉致(日本政府が公式に拉致被害者と認定した事件・被害者をいう)の一人であり、今も日本に帰国出来ていない。
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上記の写真は、筆者が講談社時代に宇出津事件を取材し記事にしたものである(フライデー/2003.5.23)


宇出津事件の元捜査員との間で、取材継続の約束を取りつけた事は、この時点で最大の収穫であった。しかし、のんびりはしていられない。NHKなど他のメデイアも動いている。私の性分として、あのチャート図だけでは満足できない。元捜査員が持っている情報の全てを取りに行きたい。それが事件記者の信条というものだ。

私だけではない。私が当時勤めていたフライデー編集部も黙ってはいなかった。フライデーのデスクは、元捜査員が拉致の現場を訪れる写真を要求してきたのである。一か八かお願いする事にした。すると、「いいですよ。僕も久しぶりに現場へ行きたいです。新しい発見があるかもしれないしね。」と取材交渉は思いの他順調に進んだ。

いよいよ元捜査員と、久米裕が拉致された現場である「舟隠し」と呼ばれる海岸へ同行取材する日がやって来た。天候にも恵まれた。現場に着くと、元捜査員は目を閉じて語り始めた。「こうして現場に来ると、やっぱり悔しいなあ。久米さんは沖から迎えにやって来るゴムボートを、どんな気持ちで見ていたのかなあ。北朝鮮工作員である犯人の李(李秋吉)は『2〜3年、向こうへ行けば必ず帰ってこられる。その時は家の一軒ぐらいは買える・・・』と騙したのです。久米さんは無言で聞いていたということです。」

この話は宇出津事件の核心部分である。すなわち、まだまだ新米の北朝鮮工作員であった拉致実行犯・李秋吉は、工作・諜報活動の指導役であるベテランの北朝鮮工作員・金世鎬(キム・セホ)に教えられた通りの台詞を用いていたのである。全く暴力的ではなく、言葉巧みに誘い出す手口が採用されていたということである。

「舟隠し」から歩いて数分のところにある、前線アジトとなっていた旅館「紫雲荘」に到着した。既に営業をやめており、経営者も従業員もいなかった。「この辺で、写真撮影を・・・」とお願いすると、元捜査員は「海向き、背中から撮って下さい。」とカメラマンに注文した。参考資料であるフライデーの記事(本文冒頭の写真)をご覧頂きたい。「宇出津事件の全貌を元捜査員が語る」としてその週の誌面になったものである。

なおこのときは、旅館紫雲荘を中心に、拉致の現場一帯をくまなく歩く聞き込み取材を継続している最中でもあった。数少ない証言のウラを取る為には、是が非でもあの捜査資料をコピーしたかった。しかしこれだけは、頑に拒否されてしまった。仕切り直しである。やはり時間をかけなければならない。デスクも苛立っていたが、私の説得を聞き入れた。取材は長期化することになった。


次回は、宇出津事件シリーズの第5回目。なんと拉致事件に日本人協力者がいたのだ。同胞を裏切り、北朝鮮と言う監獄の地に送り込むことに協力した日本人とはいったい!?(拉致に日本人協力者!?元捜査員が語る工作活動の実態|【宇出津事件】第5回)

※本来は無料でのブロマガ配信を考えていたのですが、フリーでの取材活動を続けていくために経費ねん出の必要性もあり、月500円の購読料のご負担をお願いすることとなりました(第6回目まで無料)。このブロマガは私の体力が続く限り継続していくつもりです。よろしければ拉致事件の真実を一緒に考えていただきたく、何卒ご購読をお願い申しあげます。

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Profile

佐村多賀雄

samurajournal

大阪芸術大学卒。地方紙記者、講談社フライデー、そして週刊現代を経てフリーに。週間フライデー拉致犯追跡チームにて拉致実行犯に対し直撃取材を何度も試み、多くのセンセーショナルな記事をあげる。その膨大な取材量と捜査員など関係者一同からの聞き取り調査は、現在においても色あせることはない。『なぜ犯人が捕まらないのか❓』という疑問に対し、現場の最前線でこの20年近く向き合い続けてきた、拉致事件を専門に扱う異色のジャーナリスト。

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